表3-3-4はVCEに正バイアスを与え,VBEに対して順バイアス,0Vバイアス,逆バイアスをそれぞれ与えたときのPNPトランジスタのエネルギー構造を示しています.コレクタ
− エミッタ間の電位差(VCE)に注目すればいずれも同電圧が与えられているのでコレクタ極とエミッタ極間のフェルミ準位の差はいずれも同じになります.その上で,エミッタ極に対するベース極のフェルミ準位の電位VBEが上表のようにそれぞれ与えられている様子を示しています.
VBE順バイアス印可では,価電子帯に着目するとエミッタ極からベース極への障壁が低くバイアスされるので,VBEの大きさに応じてベース電流が流れ同時にベース極にホールが送り込まれホールの濃度(すなわちキャリア濃度)が上昇します.こうしてベース極に送り込まれたホールはベース極よりもエネルギー準位の低いコレクタ極へ移動が可能となり,コレクタ
− エミッタ間の通電が起こります.
このとき,コレクタ −
エミッタ間の通電におけるキャリアは価電子帯の電子のみにより行われます.伝導帯についてもVBEバイアスにより価電子帯同様障壁電位は低くホールが存在すればキャリアとなって移動可能ですが,このキャリアとなる電子はP型のコレクタ極よりほとんど供給されませんのでPNP型については伝導帯の電子による通電はされない特徴があります.
VBE0Vおよび逆バイアス印可では,エミッタ
−
ベース間の障壁を電子およびホールのいずれも越えることはほとんどできませんのでエミッタ
− ベース間の通電も,エミッタ −
コレクタ間の通電もなされません.
PNP型のトランジスタもNPN型と極性こそ異なりますが同様の特徴を備えていることがわかると思います.
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