IS(飽和逆方向電流)は,大きな逆バイアスを与えたときに流れる逆方向の電流(スカラー)です.これは,少数キャリア(N型半導体中のホール,P型半導体中の電子)により通電可能な電流の大きさを想定しています.
順方向バイアスPN電位差を与えるとフェルミ・ディラック分布に従って接合部の障壁を越えることのできるキャリア濃度が,指数(Exponential
)関数的に増加します.このキャリア濃度の割合を,少数キャリアに対するバイアスによるキャリア分布増加分の比として
IS(飽和逆方向電流)に乗じて IF を求めています.
そのため,式3-2-5の A は,A=e
(2.718281828)を中心としたパラメータと考えていいと思います.b
は温度に係わる係数です.図3-2-31は,IF
の温度特性について負の温度係数をもつダイオードを例に図示しています.しかし,一般に市販されているダイオードは正の温度係数をもつものも多くあります.これらのパラメータは現物に合わせて設定しましょう.
式3-2-5の関係は,VF
の変動が小さいことを前提として近似しています.実際には,上記にもちょっと触れましたが,電界とキャリアの移動速度のパラメータ(これらは一般に抵抗率に集約できる要素)が考慮されていませんので,VFの変動の大きいシミュレーションの場合には注意が必要です.対応としてはダイオードにシリーズに抵抗を挿入を仮想的にすることによってより現実に近い
I-V特性をつくることができますので必要に応じて設定しましょう.
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