一般に静電容量は,式1-4-8のように極板の面積に比例し,極板間隙に反比例の特徴があります.PNダイオードの場合は,極板間隙に相当する空乏層の幅は,半導体の製造時にドープしたキャリア濃度と逆バイアスに関係しています.空乏層の大きさは,逆バイアスの大きさに応じて拡大しますので式1-4-8における極板間隙長
d[m]とバイアスの大きさは準比例関係にあります.そのため,ダイオードの静電容量は逆バイアス(電圧)とは反比例の関係になります.
こうした外部のバイアスによってダイオードの静電容量をコントロールできる特性を積極的に応用した素子がバラクタになります.バラクタ以外のダイオードであってもこの静電容量は存在します.一般的にメーカの配布するデータシートに,端子間容量などのパラメータ名で記載されています.
ちなみにPN間の静電容量は,ダイオードに限ったことではありません.PN構造をもつ(含む)半導体素子(製品)には,空乏層を介して必ずこうした静電容量が寄生しています.たとえば,後述しますがトランジスタのコレクタ−ベース間容量など様々なところに寄生しています.
蛇足ですが,トランジスタのリニア領域を使った補償器(補償器とは増幅器,フィルタなどの信号伝達回路)を設計する場合にはこうした寄生容量による帰還(フィードバック)を無視できない場合があります.また,デジタル用途においてもスイッチングのスピードに影響を与えるバラメータになります.半導体を用いた回路設計ではこうした寄生容量を必要に応じて設計に組み込む必要があります.
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