アバランシェ電圧は,上記載のようにアクセプタに作用する電界の大きさ,と温度(熱励起)の条件に関係していることを説明しました.これによると熱励起によって温度が高ければ高いほどアクセプタからの電子の電離が促進するため,ツェナー電圧が低くなる:温度特性は負の温度係数をもつことが考えられます.
しかし,一般に市販されているツェナーダイオードはVz=5.1[V]前後を境に温度係数が反転しているようです.(NECのRD*.*Eシリーズにて確認)
蛇足ですがここら辺の特性はエンジニアには経験則としておなじみで,ツェナーダイオードを基準電圧として利用する場合,一般にVz=5.1[V]が使われることが多いのは温度特性上のデータに基づき温度ドリフトを最小に設定できるためです.
温度係数が反転の特徴については,NECの技術資料によると
Vz:
5〜6V以上 : アバランシェ降伏によるものが支配的
Vz:
5〜6V以下 : トンネル効果によるものが支配的
ということで,5〜6[V]を境に異なる物理現象を利用して定電圧特性をつくっていることになります.物性が異なるということですが,もっとくだけた言い方をすれば,異なる部品と言っても過言ではないかもしれません.(製造プロセスはほぼ同じであるとおもいますが)
この点は注意が必要で,5〜6Vのツェナー電圧を境にIV特性が全く異なることはデータシートからも読みとることができます.一般にエンジニアの間では経験的に知っていることだと思います.
よって回路上でVzの変更は抵抗値の変更のように安直に実施することはできません.特に特性変化点をまたぐVz定数変更は,同じツェナーダイオードの置き換えでありながら,全く異なる部品への変更として対応しても行き過ぎではありません.
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